フッ素の塗布は、虫歯の予防やミネラル成分の再石灰化に効果的です。
しかし、実際に興味があっても「どんな効果がある?」「頻度や費用は?」という疑問を解消できない方は多いのではないでしょうか。
この記事では、フッ素塗布の効果や流れ、頻度や費用、自宅でフッ素塗布が可能かどうかについて解説します。
フッ素塗布の効果
はじめに、フッ素塗布の効果について解説します。
高濃度のフッ素を塗布できる
歯科医院などの専門医療機関では、高濃度のフッ素を塗布できます。
フッ素の濃度は「ppm」という単位で表記され、1,000ppm以上のフッ素配合歯磨き剤の場合は500ppm上がるごとに虫歯予防効果が6%増加すると考えられています。
つまり、高濃度のフッ素を塗布するだけで虫歯予防効果がより期待できるわけです。ちなみに、歯科医院で取り扱われている高濃度フッ素の濃度は次の通りです。
- 歯科医院のフッ素:約9,000ppm
- 自宅のフッ素:約900ppm~1,450ppm
自宅で使用する歯磨き剤はフッ素濃度が約1,000ppm前後であるのに対して、歯科医院で使用される歯磨き剤はフッ素濃度が約9,000ppm前後です。
高濃度のフッ素塗布は、免許を持った歯科医師もしくは歯科衛生士でなければ行えません。
市販の歯磨き粉に含まれるフッ素は法律で1,500ppmまでと定められているため、それ以上の高濃度フッ素を塗布したい場合は歯科医院を受診しましょう。
虫歯菌の活動を抑制できる
フッ素を塗布することで、虫歯菌の活動を抑制できます。本来、人間の口内には常に虫歯菌が潜んでおり、甘い食べ物や飲み物を摂取することで活動が活発化します。
特に甘いものを摂取し続けると口内は酸性に傾くため、より虫歯が発生しやすくなります。
一方で、高濃度のフッ素を塗布すると虫歯の原因となる虫歯菌の活動が抑制されるため、必然的に虫歯になりにくくなるわけです。
歯医者で口内を診てもらうことで虫歯の発見につながる他、口内クリーニングやブラッシング指導も受けられるため、より虫歯になりにくい口内環境を作れるでしょう。
酸で溶けにくい歯質を作れる
フッ素を塗布すると酸で溶けにくい歯質を作れます。歯の表面を覆っているエナメル質はリン酸カルシウムでできているため、人体の部位のなかでも非常に硬い部類の組織です。
しかし、エナメル質は強い酸(レモンなどの果物やコーラなどの炭酸飲料)に触れると化学反応を引き起こすことで次第に分解され、最終的に溶けてしまいます。
この現象は酸蝕症と呼ばれ、主に食生活が原因とされます。
一方、高濃度フッ素を塗布すると酸で融解しにくい歯質が生成されるため、必然的に丈夫な歯になりやすくなります。
ミネラル成分を再石灰化できる
フッ素の塗布には、ミネラル成分の再石灰化も期待できます。
歯を守るミネラル成分は食事で溶け出す場合がありますが、高濃度フッ素を塗布することで歯に戻すことが可能です。
ミネラル成分によってコーティングされた歯は虫歯の影響を受けにくくなるため、必然的に虫歯になりにくくなります。
効果持続期間は1回で約3ヶ月~6ヶ月
フッ素塗布の効果持続期間は、1回で約3ヶ月〜6ヶ月とされています。
歯質の強化や再石灰化の促進、虫歯菌の活動の抑制などが期待できるフッ素塗布は効果的な虫歯予防といえますが、効果が永遠に続くわけではありません。
健康的な歯を守り続けたい場合は、定期的にフッ素塗布を行うのが良いでしょう。
フッ素塗布の流れ
初めてフッ素塗布を受ける場合は、全体の流れを把握しておくと処置までスムーズです。ここでは、フッ素塗布の流れについて解説します。
歯の状態を診察する
歯科医院では、患者の口内環境がどのような状態になっているか把握するため、フッ素塗布に限らず毎回歯の状態を診察します。
歯の状態は常に変化するもので、数週間〜数ヶ月ほど歯科医院を訪れていないだけで歯垢・歯石が溜まっていたり、初期段階の虫歯が発生していたりします。
そのため、最初に歯の状態を確認してどのような治療が必要かを検討することが重要です。
フッ素塗布が目的の場合は「他の治療はやらなくていい」という方もいますが、口内環境は一部の処置だけではなく全体の処置を含めて行っていくのが一般的です。
歯は健康でも歯茎が歯周病になっている場合があるため、一度きちんと診察を受けましょう。
歯をクリーニングする
フッ素塗布を行う場合、まずは歯のクリーニングを行います。
歯の清掃を行うことでフッ素が浸透しやすくなるため、フッ素塗布を行う前に専用の洗浄機械で歯垢・歯石を取り除くのが一般的です。
歯磨きがうまくできていない場合は歯間ブラシによる歯垢除去や専用ドリルによる歯石除去が行われるため、歯のクリーニングは歯科医師・歯科衛生士の判断に任せましょう。
なお、クリーニングの段階で激しく出血するなどの問題が見られた場合は、フッ素塗布と合わせて他の治療も並行する場合があります。詳しくは歯科医院に確認してみてください。
フッ素を塗布する
あらかじめ用意しておいたフッ素を歯面全体に浸透させます。
塗布のやり方は担当医によって違いますが、基本的には歯表面だけでなく隣接する歯と歯の隙間や根元にも塗布するのが一般的です。
この際、歯に浸透するように満遍なく塗布することが重要ですが、担当医のスキルによっては差が出ることもあるため、できる限り評判の良い歯科医院から選ぶようにしましょう。
最後に余分なフッ素を拭き取れば、処置は概ね完了です。
経過を観察する
フッ素塗布を行った後は、30分程は飲食やうがいを控えて下さい。
歯科医院で使用しているフッ素の量では、体への影響はないため、飲み込んでも問題はありません。(フッ素は大量に摂取するとお腹がゆるくなることがあります。)。
その他の注意点は担当の歯科医師、もしくは歯科衛生士に確認しましょう。
フッ素塗布の頻度
フッ素塗布の頻度はどれくらいが理想なのでしょうか。ここでは、フッ素塗布の頻度について解説します。
理想は3ヶ月~6ヶ月に一度
フッ素塗布の頻度は3〜6ヶ月に一度が理想とされています。高濃度フッ素であっても一度塗布して終わりではなく、繰り返し塗布することが重要です。
効果の持続期間は人によって変わるため一概には言えませんが、最低でも数ヶ月〜半年に一度はフッ素塗布を受けましょう。
人によってフッ素の浸透具合や定着具合はさまざまなため、経過観察しながらどれくらいの頻度で塗るべきなのか担当医に確認してみてください。
フッ素症のリスクに注意
高濃度のフッ素は虫歯予防に効果的とされていますが、だからといって頻繁に塗り続ければいいということではありません。
短期間で高濃度フッ素を塗布すると、フッ素症を引き起こすリスクがあります。フッ素症は、エナメル質の石灰化期間にフッ化物を摂取し続けることで発生する歯の形成障害です。
フッ素症になると歯表面に縞模様や斑点ができる他、白濁した色合いとなるなどいくつかの問題が発生するため、高濃度のフッ素の過剰摂取には注意しましょう。
大人も子供も受けられる
余談にはなりますが、フッ素は大人でも子供でも塗布可能です。
大人になってから塗布しても遅くはないですし、子供の頃から早めに塗布しておくとより効果が期待できます。
ただし、初期の虫歯がある場合や虫歯になりやすい体質の場合、口腔内の状態などによってフッ素を塗布する頻度は変わるため、詳しくは担当医にご確認ください。
フッ素塗布の費用
フッ素塗布は保険適用が可能ですが、具体的にいくら位かかるのでしょうか。ここでは、フッ素塗布の費用について解説します。
通常は保険適用
フッ素塗布は通常、保険適用で処置可能です。
厚生労働省は予防歯科の観点から歯を大切にする重要性を説いており、2016年から「か強診(かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所)」という取り組みが実施されています。
これは、フッ素塗布や定期健診など虫歯予防のための施術に健康保険を適用する取り組みで、4年後の2020年にさらに保険適用範囲が拡充された制度です。
「か強診」が促進されたことでより「かかりつけ医と一緒に歯を守る」という意識改革が進んでおり、フッ素塗布も保険適用内で受けられるようになっています。
原則は3割負担でフッ素塗布が受けられるため、予算が限られている方でも比較的受けやすい治療といえるでしょう。
相場は1,000円前後
フッ素塗布の費用相場は、1,000円前後となっています。
軽度の虫歯治療は1,500円〜3,000円が相場で、重度の虫歯治療は3,000円〜7,000円が相場とされるため、予防歯科の観点から見てもフッ素塗布は事前に行っておくことを推奨します。
虫歯は放置すると最悪抜けてしまう可能性もあるため、大切な歯を失わないためにも予防歯科としてフッ素塗布を考えてみてはいかがでしょうか。
自宅でフッ素塗布は可能?
自宅での高濃度フッ素の塗布はできません。
歯科医院で取り扱う9,000ppmの高濃度フッ素は、歯科医師や歯科衛生士など、専門資格を有する方だけが扱えるもので、素人が自宅で個人的に塗布することは認められていません。
歯医者が適切な量を見極めて塗布する分には問題ありませんが、取り扱いを誤ると健康被害も懸念されるため、フッ素塗布は歯科医院に相談しましょう。
ただし、市販されている歯磨き粉にもフッ素は1,000ppm前後含まれているため、毎日しっかりと歯磨きすることで一定の虫歯予防になります。
日々のセルフケアは健康的な歯を守ることにつながるため、毎日の歯磨きを怠らないことが重要です。
まとめ
歯のフッ素塗布は虫歯の予防やミネラル成分の再石灰化に効果的とされ、定期的に塗布することで口内環境を健康に保つ効果が期待できるでしょう。
市販されている歯磨き粉にも1,000ppm前後のフッ素が含まれているため、毎日歯磨きを徹底することで一定の虫歯予防効果が期待できます。
ただし、歯医者で取り扱っている高濃度フッ素は濃度9,000ppm前後であるため、虫歯予防を徹底するなら歯医者で塗布してもらうのが効果的ではないでしょうか。
箕面市の箕面おとなこども歯科では、高濃度のフッ素塗布に対応可能しており、予防歯科の観点から患者様のお悩みに寄り添った診療を行っております。
箕面おとなこども歯科では虫歯の治療はもちろん予防歯科の観点も重視しているため、現段階で虫歯がないという方もぜひ一度気軽にお問い合わせください。