日常生活で、転んで地面に歯をぶつけてしまった、スポーツをしているときに人とぶつかってしまったなど、さまざまな状況で歯が折れてしまう場合があります。
すぐに歯科医院を受診するべきですが、受診できなかったり、歯科医院が休診の日に折れてしまったりした場合はどのように対処すればよいのでしょうか。
この記事では、歯が折れたときの応急処置や放置するリスク、治療方法を解説するので参考にしてください。
歯が折れたときの応急処置
歯が折れたときの応急処置として、止血や冷やす、鎮痛剤を使うなどの処置があります。
歯が折れた瞬間、驚いて動揺してしまう方が多いですが、まずは冷静になって対処しましょう。
ここでは歯科医院を受診するまでの間に応急処置としてできる対処法を順に解説していきます。
口内を清潔に保つ
歯が折れてしまったときは、まず口内を清潔に保つようにしましょう。
口内が不衛生な状態のままにしておくと、折れた部分から細菌が侵入して繁殖し、歯周病や虫歯などの二次被害に発展してしまう場合もあります。
折れてしまった部分は気になって手で触ってしまいがちですが、触らずそのままにしておきます。
出血や汚れがある場合は、折れた部分はもろくなっているかもしれないので優しくうがいをする程度にしましょう。
止血する
出血している場合は、応急処置として止血をします。
歯茎や舌、頬などから大量に出血していると、気道障害や誤嚥性肺炎を引き起こす危険性があります。
止血に用いるのは、滅菌されたガーゼや清潔なタオルやハンカチなどが望ましく、もしない場合はティッシュペーパーでもよいでしょう。
冷やす
歯茎が腫れていたり傷みがあったりする場合は、冷やす方法がおすすめです。
冷やすときに重要なのは、ケガをした部分を直接冷やさないないよう、水で濡らしたタオルや氷を包んだタオルなどで頬の側から優しく冷やしましょう。
冷えピタなどの冷却ジェルシートなどを利用するのも効果的です。
鎮痛剤を使う
痛みが著しく強い場合は、鎮痛剤を服用して痛みを抑えましょう。
歯が折れて神経が露出してしまうと、痛みが出てくる場合が多いです。
歯が折れた場合に、自己判断で不適切な処置をするのはおすすめできませんが、痛みがつらい場合は、市販の鎮痛剤を服用して痛みを和らげてください。
服用する鎮痛剤はドラッグストアや薬局などで市販されてているもので構いません。
なるべく早く病院へ行く
歯が折れた場合は、なるべく早く病院へ行き、正しい診断と治療を受けましょう。
痛みがない場合や、鎮痛剤で和らいでいる場合でも、折れた部分に食べもののかすや歯垢が溜まってしまうと虫歯になる可能性が高くなります。
早く受診すればするほど、歯の組織が生きているため歯を抜かずに保存して治療できる可能性が高まります。
かかりつけの歯科医院、または外傷治療をおこなっている口腔外科のある歯科医院を受診するのが最善です。
折れた歯はどうする?
歯が折れたときの応急処置後、折れた歯はどうしたらよいのでしょうか?
ここでは、折れた歯の破片を探し、生理食塩水などに浸して保管する方法を解説します。
破片を探す
歯が折れた場合、まずは口の中や周囲を注意深く見回して、折れた歯の破片を探します。
折れた歯を元通りにするのは難しいケースもありますが、破片を治療に活用できる場合もあるため、細かな破片も残さず探しましょう。
生理食塩水に浸けて保管する
折れてしまった歯は、生理食塩水に浸けて保管しましょう。
折れた歯の状態を保つために、まず乾燥を避けます。
歯が根からすべて抜けた場合に、乾燥していなければ再植する際に骨に結びつく可能性が高いからです。
生理食塩水が手に入らない場合は、牛乳に浸しましょう。
短時間の場合であれば、口の中に保持しても構いませんが飲み込まないように気をつけてください。
水で洗ったり、汚れをティッシュなどでゴシゴシ拭いたりすると歯根の表面の組織に傷が付いてしまうため、控えて下さい。
折れた歯を放置するリスク
折れた歯を放置すると、口腔内のトラブルや歯を失うリスクやが高まったり、噛み合わせや歯並びが悪くなったりします。
歯が折れたものの、痛みがなかったり忙しくて受診できなかったりして放置してしまう方もいるでしょう。
ここでは折れた歯を放置するリスクを解説します。
口腔内のトラブルのリスクが高まる
歯が折れたまま放置すると、口腔内のトラブルが起きやすくなります。
神経や血管が露出したままになるので痛みを引き起こし、歯の内部に細菌が侵入して感染を起こすリスクが高くなります。
また、口腔ケアが十分にできないので汚れが溜まりやすくなり、虫歯や歯周病になる可能性があり、進行すると日常生活にも支障をきたすため早めの治療が必要です。
歯を失うリスクが高まる
折れた歯をそのまま放置していると、歯を失うリスクが高まります。
折れた部分がさらに欠けたり、亀裂が入って歯が割れてしまったりすると、その歯の寿命も短くなります。
治療による修復が難しかったり、感染が広がってしまった場合は、抜歯が必要になる可能性が高いです。
歯が大きく割れてしまっても、状態によっては抜歯を避けられる場合もあるため、早めに歯科医院を受診しましょう。
噛み合わせ・歯並びが悪くなる
折れた歯を放置すると、噛み合わせ、歯並びが悪くなります。
噛み合わせは、歯が欠けた、折れた、抜けたのどの状態であっても悪くなります。
特に抜けたままの放置は歯のスペースが空いたままになり、周囲の歯がその空いたスペースを埋めようと、傾いてきたり動いてきたりするので避けましょう。
折れた歯を放置すれば噛み合わせが悪くなったり、歯並びまで崩れる結果になってしまいます。
歯が折れたときの治療法
歯が折れたときの治療法は、折れた範囲が小さい場合と大きい場合で変わってきます。
折れた範囲の大きさに分けて治療法をご紹介します。
折れた範囲が小さい場合
折れた範囲が小さい場合の治療方法としては、破損片の接着やコンポジットレジン修復、ラミネートべニアがあります。
接着剤やレジンを用いて修復する方法と被せて接着する方法があり、順に解説していきます。
破損片の接着
破損片の接着とは、歯の一部が折れ破損片がある場合に、歯科用接着剤を用いて元の位置に接着して修復する治療方法です。
すべての破損片が元通りに修復できるとは限らず、必要に応じてレジンを充填しながら修復します。
メリットはしっかり接着できれば、機能回復と審美的回復が期待できる点です。
デメリットは噛む力にどこまで耐えられるのか、接着強度の予知ができない点です。
破損片の戻りが悪いと、しっかりとした接着が期待できず、また破損片が複数の場合もしっかり接着ができなかったり元通りに修復できなくなります。
さらに破損片を接着してその後脱落した場合、再接着を試みても確実な接着が期待できないことが多いです。
コンポジットレジン修復
コンポジットレジン修復とは、歯の一部が折れ破損片がない場合に、元の歯と似た色調を持つ歯科用の樹脂製プラスチックのコンポジットレジンを用いて欠損部分を修復する治療方法です。
メリットは、コンポジットレジンは直接歯に接着させることができるため、歯を抜いたり削ったりせずに歯の保存と審美性を両立させた治療が可能な点です。
形の修正が簡単にでき、光照射によって固められるため、1回の治療で済みます。
健康保険が適応され、治療費が安価な点もメリットです。
デメリットは、接着する面積が狭いため、噛む力に耐えきれずに取れてしまう可能性がある点です。
コンポジットレジンは劣化する素材のため、欠けたりすり減ったり、着色により変色してきます。
長期的には審美性の問題があります。
ラミネートベニア
ラミネートベニアとは、歯の表面を薄く削り薄いセラミックをかぶせて接着させる治療方法です。
メリットは、着色や変色がないため綺麗な白色を保てるため、審美性が長期的に維持できる点です。
削る量も少ないので、歯自体を保存できる点もメリットです。
前歯などの目立つ場所でも美しく自然な仕上がりになります。
審美性に優れていますが、とても薄いセラミックの素材であるため、歯並びや噛み合わせによってはラミネートべニアが外れたり欠けたりする事があります。
強度がやや劣るので、折れた欠損部が大きい場合は適しません。
治療費は1本あたり数万円の事が多いです。
折れた範囲が大きい場合
折れた範囲が大きい場合の治療方法としては、CADCAM冠やセラミッククラウン、ブリッジ、インプラントがあります。
被せ物をするか、埋め込むかで変わってくるため、順に解説していきます。
CADCAM冠
CADCAM冠は、特殊なレジンで作った白い被せ物で、歯冠の大半を補わなければならない、大きな損傷時に用いられる治療法です。
メリットは、保険が適用されることです。
また、金属ではないので金属アレルギーを起こしたり、金属による歯肉の黒ずみが気になる心配がありません。
ただし、強化プラスチックの様な素材のため、強度が弱く割れたり欠けたりします。
長期的には着色により変色してきます。
また、治療する歯によって条件があり、すべての歯で適用できるわけではありません。
セラミッククラウン
セラミッククラウンは、修復材料で歯冠の大半を補わなければならない、大きな損傷時に用いられるセラミックの被せ物です。
セラミックの一番の特徴は、とても綺麗な白さと、硬く耐久性に優れていることです。
審美性も長期的に維持でき、着色が無く、質感や光沢、透明度も忠実に再現できます。
変色してしまった歯でも高いレベルで審美性が回復され、十分な強度で歯を補強できる点もメリットであり、歯が折れたり欠けたりした際に用いられる最適な治療方法です。
デメリットは、自費診療のため治療費は10割負担となりますが、医療費控除の対象となります。
ブリッジ
ブリッジを用いた治療方法は、抜歯などでなくなった歯の両側にある歯を削って土台にし、そこに一体型になった人工の歯を被せる方法です。
入れ歯と違って取り外しをしなくて済みます。
しかし、両側にある健康な歯を大量に削るため、歯の寿命が著しく短くなることが大きな欠点です。
さらに、歯肉とブリッジの間に食べもののかすが詰まりやすく、虫歯や歯周病の原因になるのもデメリットです。
インプラント
インプラントは歯を失った箇所に、チタンの歯根を埋め込み、被せ物を装着し天然の歯と同じような歯をつくる治療法です。
見た目も本物の歯と同じように再現でき、顎の骨にしっかりと固定されるため、食べ物も自分の歯のように噛めます。
インプラントは、歯が折れて抜歯せざるを得なく丸ごと1本失った場合に適応される治療方法ですが、顎の骨にインプラントを入れる処置のため、治療が完了するまで数カ月の期間を要します。
自費診療のため10割負担となりますが、医療費控除の対象となります。
インプラントは天然の歯と同じく、定期的な検診や歯石取りをおこなっていくことで、長期に渡り使用することができます。
治療費は、口腔内の状態や埋め込むインプラントの種類によって異なりますが、1本あたり40〜60万円程度かかります。
折れにくい歯を作るためのポイント
折れにくい歯を作るためには、日頃から歯磨きをしっかりおこない、定期的に歯科検診を受けるのがポイントです。
虫歯を初期の段階で発見して治療を受けると、歯の寿命が長く保てるため、神経を抜かざるを得ない事態を避けられます。
また歯の健康維持のために歯垢や歯石の除去をしてもらいましょう。
歯ブラシやフロスでは届きにくい部分までクリーニングしてもらえます。
噛み合わせが悪い場合も歯に負担をかけるので、矯正治療などを用いて直しましょう。
スポーツなどで歯に外傷を受けやすい方は、マウスガードの使用で歯を保護し、歯が折れる事態を防止できます。
他にも、フッ素塗布をして歯のエナメル質を強化したり、セラミック治療などで歯質を保護する方法があります。
まとめ
歯が折れる原因は、虫歯や噛み合わせ、外傷などがあります。
歯が折れた場合は応急処置として口内を清潔に保ち、歯を乾燥させないようにしましょう。
放置すると口腔内トラブルや歯を失うリスクが高まります。
治療法は接着や被せる方法がありますが、健全な歯を保つためには定期的な歯科健診とクリーニングが必要です。
歯のケガや治療で心配な時は、口腔外科出身の院長が治療をおこない、こどもから大人まで安心して治療を受けられる箕面おとなこども歯科への相談をおすすめします。