虫歯は放置すると神経を抜いたり歯を抜いたりしなくてはならなくなるため、初期のうちに気付いて治療したいと誰もが思っています。
しかし、痛かったりしみたりする症状が出るまで気付かないまま進行するのがほとんどです。
この記事では、虫歯を初期のうちに見分ける方法や、進行度による見分け方、虫歯になりやすい人やできやすい場所などを紹介します。
「虫歯かも……」と思ったときの対処法も合わせて紹介するため、悪化予防の参考にしてください。
虫歯を見分けるポイント
虫歯は、虫歯菌が糖分を分解する際に作り出す酸によって、歯が徐々に溶かされていく病気です。
初期段階で自覚症状がほとんどなく、痛みを感じ始めるのはある程度進行してからです。
ここでは、虫歯を見分けるポイントを紹介します。初期症状での見分け方もあるため、参考にしてください。
見た目で見分けるポイント
虫歯の初期段階では、歯の表面に白濁した斑点がみられることがあります。
ホワイトスポットといって、歯の表面のエナメル質が酸性になってカルシウム成分が少なくなっているために起こる、虫歯菌が歯の表面に付着している状態です。
痛みもなく、歯質自体はまだ健康です。
気をつけて見ていると発見できますが、これを放置していると茶色→黒色→穴が空くなど、進行が見た目で分かるようになります。
白い斑点の時点では、歯独自の修復作用による『再石灰化作用』で治ります。
フッ素入りの歯磨き粉やジェル、歯科医院でのフッ素塗布などの処置により再石灰化を促すことで、削らなくても治療できるため、この時点で見つけるのが理想でしょう。
痛みで見分けるポイント
虫歯を疑うような痛みの場合、虫歯の他に知覚過敏の可能性もあり、見分けるのは困難です。
虫歯の痛みの特徴は以下です。
- 飲食がしみる場合は10秒程度から数分続くなどがある
- 歯を叩くと響くような鋭い痛みがある
- 茶~黒のシミが見られる場合がある
知覚過敏の痛みの特徴は以下です。
- 飲食でしみても10秒程度で治まる
- 歯を叩いても痛みがない
- 歯はきれいでも根元が露出している場合がある
痛みの症状だけではその区別が患者さんには難しいですが、どちらの場合も放置して悪化すると深刻な事態につながるため、早めの受診が必要です。
虫歯は見た目ではわからないこともある
見た目や痛みの他にも虫歯を見分けるポイントがあります。
以下のような場合は虫歯を疑いましょう。
- デンタルフロスが切れる……歯のエナメル質が溶けて表面がギザギザしている
- 物がはさまりやすくなった……歯と歯の見えないところが虫歯になっている
- 歯がざらざらする……歯のエナメル質が溶かされている。光沢を失う
- 歯の隣接部がうっすら黒く透けているように見える……表面に異常がなくても、中に穴が空いている
- 冷たい飲み物や甘いものがしみる……表面のエナメル質が虫歯で溶けている
歯と歯の間は目が届かないため、痛みがない場合、以上のようなことでもないと発見は難しいでしょう。
見づらいところを確認するため、デンタルミラーなどを用意しておくと自宅で虫歯を発見でき、磨き残しのチェックにも便利です。
いずれにしても、見た目だけでは歯科医師でも発見できない虫歯があります。その場合はレントゲン撮影で発見するため、早期の受診が必要です。
虫歯の進行度による見分け方
虫歯は5つの段階を経て進行していきます。
虫歯の5段階それぞれの進行時の見分け方を紹介します。
CO(要観察歯)
虫歯の初期段階のCO(シーオー)では、歯の表面に白濁したような斑点が見られます。
歯の表面のエナメル質から、カルシウムやリン酸が溶けだしているためです。
自覚症状がなく、この時点では歯を削らずにフッ素塗布を行ったうえで、自然治癒する可能性があります。
定期的な観察や正しいブラッシング指導のもと、歯の再石灰化作用の力で治せます。
C1
C1(シーワン)は、エナメル質に細菌が留まっている状態で、エナメル質に穴が開いた虫歯部分が茶や黒に変色します。
まだ痛みは発生しませんが、甘いものなどがしみる場合があります。
治療は虫歯部分を削って行われますが、神経からは遠いため、麻酔を使用する必要はほとんどありません。
虫歯を削り取った部分にレジンを詰める治療が行われます。
C2
C1から進行してC2になると、虫歯は象牙質まで及びます。C1で軽かった「甘いものがしみる」などの症状がC2ではより分かりやすくなります。
他にも、噛むと痛い、冷たいものもしみるなどの症状も見え始めます。
C2になると虫歯も象牙質まで入り込むため、病変部が広い場合は詰め物以外にも被せ物をする治療も行われます。
C3
いよいよ何もしなくても痛みが出てくるC3は、虫歯が神経まで達している状態です。
何もなくてもズキズキ痛む他に、熱いものがしみるようになります。
神経が虫歯菌に侵されているため、神経を除去する根管治療が行われます。
麻酔はもちろんのこと、抜髄(神経を抜くこと)は痛みが出やすいため、鎮痛剤が処方されることが多いです。
詰め物を作成するための型取りなどの手順があるため、通院回数も多めです。
C4
C4は虫歯が歯根まで達している状態で、歯は原形をとどめていません。歯根だけが残るような状態になるため『残根状態』と呼ばれることもあります。
神経が死んでいるため痛みを感じなくなる場合があり、それをさらに放置すると今度は膿が溜まって激しい痛みを伴います。
状態によっては歯根を残して差し歯にする方法もあるため、痛くないからと放置せず、なるべく早く歯科医院を受診すれば、歯を失うことにはならないかもしれません。
虫歯チェックリスト
虫歯のセルフチェックリストです。
一つでも当てはまれば虫歯の可能性があります。できればデンタルミラーを用意して、隅々まで確認しながらチェックしてください。
- 歯と歯茎の境目が白く濁っている
- 歯がざらざらする
- 熱いもの・冷たいもの・甘いものがしみる
- 歯に穴やヒビが見える・割れている
- 黒い部分がある
- 奥歯の溝が茶・黒くなっている
- 噛むと痛い
- 重い・鈍く響くなどの違和感がある
- 食べ物が歯にはさまる感覚がある
- 何もしてなくても痛い
どれも虫歯の症状です。早期発見のために一つでも気になったら歯科医院を受診しましょう。
歯科医院での虫歯の見分け方・検査方法
歯科医院では目で見ても確認できない、自覚症状のない虫歯をどのように発見するのでしょうか?
歯科医院での虫歯の見分け方や検査方法を紹介します。
触診
歯科医院でも触診を行います。使用するのは指先や、探針(たんしん)と呼ばれる器具です。
唾液やプラークなどがあるところを、見るだけで虫歯を発見するのは難しいことです。
虫歯の場合、探針で虫歯部分を触ると粘りがあります。
他にも、表面を触ることでざらつきや軟化などを調べることができます。
マイクロスコープ・ルーペ
口の中は暗く、見えづらい小さな患部もあるため、ライトや拡大機能の付いたマイクロスコープやルーペによる観察も行います。
ルーペはマイクロスコープほどの拡大率ではありませんが、普段使いのしやすさでよく使用されます。
どちらも、歯科医師の虫歯診断を助けるツールです。
レントゲン
見ても触っても分からない、歯と歯の間などの虫歯を発見するのはレントゲンです。
虫歯には表面を見ても変化がないにもかかわらず、内部で穴が開くものがありますが、そういった部分も含め、虫歯になっている部分はレントゲンで黒く映ります。
レントゲンでは、虫歯がどこまで進行しているかの確認も行えます。
虫歯ができやすい場所
虫歯はできやすい場所があるため、もし自分で歯を観察したい場合、次にあげる場所を重点的に見てみましょう。
- 咬合面……噛み合わせの面。うっすら溝があり、そこに歯垢が溜まる
- 隣接面……歯と歯が隣り合って接している部分
- 歯頚部……歯と歯肉の境目。歯垢が付きやすい
- 根面……歯茎が下がることで見える歯根の表面。
- 二次カリエス……虫歯治療済みの歯が再び虫歯になること。被せ物と詰め物がある
- 6歳臼歯……第一大臼歯。咬合面の溝が深い
虫歯ができにくいのは隣接面以外の歯冠部側面だけです。それ以外のポイントを重点的に磨いて虫歯を予防しましょう。
虫歯のリスクが高い人
虫歯になりやすい場所もあれば、虫歯になりやすい方もいます。
以下の方は虫歯になりやすいため、積極的に歯を見て確認してみましょう。
- 甘いものや刺激の強い(酸っぱい)ものが好き
- 食事の時間が長い
- 食べた後、歯を磨くまで時間が空く人
- ブラッシングの方法を間違えている
- 噛み合わせに問題がある
- 口呼吸(唾液が減ると菌が増える)
- 口腔悪習癖がある
- 生活習慣が乱れている
- 詰め物や被せ物がある(二次カリエス)
- 遺伝による虫歯になりやすい歯質
遺伝による歯質には、フッ素塗布が効果的です。
一つ一つを見てみると、改善が難しいのは口腔悪習癖と噛み合わせ・遺伝などで、あとは改善できます。
人間の唾液には虫歯を予防する『再石灰化』の力がありますが、きれいに磨くことは再石灰化を促進し、食事と食事の間隔を規則正しく空けることは再石灰化の時間を与えることになります。
もともと人間に備わっている力を効果的に使えるよう、改善について前向きに検討してみましょう。
虫歯を放置するリスク
痛くなるまで気付かないのは仕方ないとして、痛みだしても痛み止めで騙し騙し放置する方も少なくありません。
しかし、虫歯は放置すればするほど以下のリスクが高まります。
- 神経まで進むと激しい痛みに襲われる
- 口臭が強くなる
- 全身や脳に菌がまわる
- 神経を抜く場合がある
- 抜歯する可能性がある
- 費用がかかる
虫歯を放置していると最悪の場合、神経が死んで抜歯が必要になる可能性があります。
歯の神経が死ぬと痛みを感じない場合もありますが、この状態を放置すると、歯根に膿の袋(歯根嚢胞)が作られるため激痛が予想されます。
永久歯を抜くと、歯はもう生えてきません。抜かなくても、削ったり神経を抜いたりすると、治療はしてもそれ以上の回復が見込めないのが虫歯です。
歯がなくなると食事に支障をきたし、歯並びは崩れ、代わりの歯を入れるとなるとその費用は治療代程度では済みません。
どの時点でも虫歯に気付いたら、放置する選択肢は無いものと思いましょう。
虫歯かもしれないと思ったときの対処法
虫歯かもしれない歯を発見した場合の対処法を紹介します。
自分でできることは多くありませんが、歯を失わずに済む最も効果的な対処法です。
様子を見ずに受診する
虫歯を見つけた場合、初期虫歯であっても、すでに痛みがある場合でも、鎮痛剤を(飲んでもいいですが)飲んで様子を見るなどということはせず、早めに歯科医院を受診しましょう。
初期虫歯の場合は自力で治すことも可能です。しかし初期虫歯を見つけることがまず難しいため、結局は判断がついていないことになります。
以下の場合、たった1週間でも虫歯の進行が早い場合があります。
- 乳歯(抵抗力が弱いため)
- 甘いものが好き
- 歯磨きが苦手
初期虫歯はもちろん、歯の内部で進行している場合、外からは見ても分からず、素人に見分けは難しくなります。
虫歯治療は早期発見が最適です。虫歯を見つけた・疑わしいなど、気が付いた時点が一番早いため、できるだけ早く歯科医院を受診してください。
ホームケアを強化する
どうしてもすぐに受診できない場合は、以下のように家でできることに取り組みましょう。
- フッ素入りの歯磨き粉を選ぶ
- デンタルフロス・歯間ブラシを使用する
- キシリトールガムなどで唾液分泌を促進する
痛い場合はもちろん鎮痛剤などを服用しますが、痛みがなくても虫歯に気付いたら、それ以上進行させないことを優先して行動しましょう。
まとめ
虫歯の早期発見には歯科医院の定期検診がおすすめです。虫歯がなくても、少なくとも1年に2回受けると、虫歯の他に怖い歯周病なども予防・発見できます。
痛くもないし、ちょっと歯に斑点がある程度の場合、受診するほどではないと思うかもしれません。
しかし、自覚症状がないまま悪化していく虫歯を症状がないうちに発見することが、その後の治療をよい結果につなげます。
気のせい程度で受診するのがまさに『早期』といえるでしょう。
箕面おとなこども歯科ではその名前の通り、こどもからおとなまで、そして歯医者も通う歯科医院です。
可能なかぎり神経を残して歯を守り、歯の寿命を延ばす治療を目指しています。
「虫歯だと思うんだけど、どうだろう?」を箕面おとなこども歯科にお聞かせください。その歯に一番いい対処法を提案させて頂きます。