歯周病は初期の自覚症状が乏しく、気が付いたときには中等度まで進行している、早期発見が難しい疾患です。
40代になると特に女性が悪化しやすい歯周病は、手遅れになることで見られるさまざまな症状があります。
この記事では、歯周病の手遅れとされる症状、その場合の対処法、治療法、手遅れになる前にできることなどを紹介します。
国民病といわれている疾患の末期症状について知り、予防に役立てましょう。
歯周病が手遅れの場合の症状とは
手遅れの歯周病のことを、『重度歯周炎』といいます。
歯周病には、歯肉炎→軽度歯周炎→中等度歯周炎→重度歯周炎と進んでいく進行度合があります。
自覚症状に気が付くのは中等度歯周炎で、それまではほとんど症状がなく進行していきます。
手遅れといわれる重度歯周炎の以下のような症状について、一つずつ紹介します。
歯がぐらついてしっかり噛めない
歯周病は手遅れになるとぐらついてしまい、物がしっかり噛めなくなります。
顎の骨が溶ける疾患のため、手遅れになる頃には歯を支える骨が大きく失われるためです。
特に上下に動くようになったら、歯を支えているのが歯肉のみになっているため、何かの拍子で歯が抜ける可能性があります。
噛むと痛むようになる
噛むと痛むのは、炎症が歯茎だけでは収まらず、歯を支える顎の骨などに広がっている状態です。
また、不安定になった歯のせいで、噛むときに余計な力がかかってしまうのも、痛みが生じる原因です。
これほどになる前に痛むことがなかったのかと疑問に思うかもしれませんが、中等度でも痛みがないことが多いのが歯周病の怖い所といえるでしょう。
歯並び・噛み合わせが悪くなる
手遅れの歯周病は歯を支える骨が溶けるため噛むたびに歯が動き、正しい歯列を保てず、歯並びが悪くなります。
見た目が悪くなるだけでなく、噛み合わせの悪化にもなり、偏った負荷がかかるため骨吸収が起こるなど、さらなる骨の減少につながります。
歯磨きがしづらくなってプラークが付着しやすくなる、食事がしにくくなるなど、噛み合わせが悪くなると、多方面に悪影響が出てくるため注意が必要です。
口臭が強くなる
『歯周ポケット』に歯垢や歯石・食べかすが溜まり、悪臭を放つガスを発するようになるのが、口臭がきつくなる原因です。
歯周病では、歯と歯茎の隙間にある『歯周ポケット』に歯垢が溜まりやすく、重度の場合はそのポケットが深くなっています。
症状が悪化し膿や出血が見られるようになると、口臭はさらにきつくなります。
歯茎から膿が出るようになる
手遅れの歯周病になると感染が進行し、歯茎から膿が出るようになります。
感染によって炎症が起こると、免疫細胞が歯周病菌と戦いますが、歯周病菌の方が多くなったり免疫力が弱まっていたりすると負けてしまい、膿になります。
歯茎を押すと膿が出るのは、膿が歯周ポケットに溜まり続けるためです。
歯茎が下がり、歯が長く見える
歯周病は手遅れになってくると、顎の骨が溶けるにしたがって、それについていくように歯茎も一緒に下がり、歯の根が見えてくるため、歯が長く見えます。
また、歯茎の厚みがなくなっていくため、歯磨きの力が強い場合、ますます歯茎は退縮していきます。
歯根が露出するため、知覚過敏の症状がみられたり、歯根はエナメル質に覆われていないため、虫歯になる可能性もあり、見た目だけの問題では済みません。
歯周病が手遅れの場合はどうすればいい?
歯周病が手遅れの場合でも、できることを紹介します。
「歯周病って治らないから、どうせ抜歯でしょう?」と諦める前に、参考にしてください。
治療次第で歯を残せる可能性がある
歯周病が手遅れと思われるほど悪化した場合でも、医師によって判断は変わります。
歯を残す方法を最後まで模索してくれる歯科医師もいるため、もし「抜歯しかありません」といわれたら、他の歯科医師にも相談してみましょう。
その際は、歯周病指導医や専門医・認定医といった専門的な資格を持っているか、歯をできるだけ残すこだわりがある歯科医院を探しましょう。
また、外科的処置ができる歯科医師ならできることが幅広くなり、治療方法の選択につながります。
安静にしていても治らないため受診が必要
歯周病で痛みを感じた場合「1日休んでいたら良くなった」「しばらくしたら腫れが引いた」など、症状が収まる場合があります。
しかしそれは一時的なもので、歯周病は安静にしていても治ることはありません。
様子を見ながら放置する間にも感染が進行するのが歯周病です。
症状に気付いた時点で受診することが、その時点で選べる一番早い道です。
歯が抜けても治ってはいない
最終的な手遅れは「歯が抜ける」ことですが、それで治療しなくてよくなるわけではありません。
歯周病は歯の疾患のため、歯が存在しなければ歯周病はもう進行しません。
しかし、それをそのまま放置すると、以下のような変化が現れます。
- 残った歯が動き歯並びや噛み合わせが狂う……咀嚼機能がさらに低下する
- 審美性が低下する……じつは一番患者さんが気にしている部分
- 顎の骨が痩せてしまう……骨量が少ないことで不可能になる治療がある
歯並びが悪くなり、噛み合わせの問題が起こるため、口腔機能の回復を図らなければいけません。
歯が抜けたあとの治療法には以下があります。
- 入れ歯……保険適用で装着できる。使い心地があまりよくない
- ブリッジ……保険適用。安定感が高いが支えになる歯がないと装着できない
- インプラント……保険適用でないため高額。機能性、審美性に優れるが、顎の骨量が足りないとできない場合も多い
健康な口腔環境は全身によい影響を与えます。歯の自然脱落を放置せず、治療をしっかりと最後まで済ませましょう。
手遅れになる前に!重度の歯周病で行われる治療
上でも紹介したように、最終的な手遅れは歯の自然脱落ですが、その前の重度の歯周病にもできる治療はあります。
重度の歯周病で行われる治療を紹介します。最先端の治療法もあるため、参考にしてください。
歯磨き指導・クリーニング
歯周病の一番基本の治療法は、初期でも重度でも同じく『プラークコントロール』、つまり歯磨きです。
歯ブラシは自分にあった適切なサイズを選び、歯ブラシの他に歯間ブラシなども使い、正しい歯磨き方法の指導を受け、徹底的に歯垢を除去します。
通院する歯科医院ではクリーニングを行います。歯ブラシでは取りきれない歯周ポケット内の歯垢や歯石を専用の機器で除去します。
歯科医院と患者さんの二人三脚で口内環境を清潔にし、歯周ポケットの最小化を目指すことが、一番大切な歯周病の治療です。
歯周外科治療
重度の歯周病には外科処置が必要な場合があります。
以下のような外科手術があります。
- 歯周切除術……深い歯周ポケットを形成している歯茎を切り取る
- フラップ手術……深い歯周ポケットに隠れる歯石を取り除くために切開する
- 歯周組織再生療法……(後述します)
- 骨移植……(後述します)
- 抜歯……顎の骨の吸収が激しく、ぐらつきが酷い歯を抜く
治療自体はどれも麻酔を使用するため、治療中の痛みは心配ありません。
切除や切開などは外科手術となるため、口腔外科の経験が豊富な医師がいる歯科医院で治療をしてもらうと安心です。
歯周補綴
『歯周補綴(ししゅうほてつ)』とは、ぐらついている歯を被せ物で連結して安定させる治療法です。
歯がぐらついているうちは物もまともに噛めず、歯磨きにも支障があります。
揺れている歯でもお互いをつなぎ固定することで安定するため、メンテナンスがしやすくなり、口腔機能も回復します。
歯がぐらついていてもなんとか残したいという患者さんの希望に応えられる治療法です。
歯周組織再生療法
最先端医療である歯周組織再生療法は、歯周病の進行を抑えながら、失われた歯槽骨や歯根膜・セメント質などの歯周組織の再生を促す治療法です。
骨はもともと再生能力がありますが、歯根に骨芽細胞を増殖させる薬剤『エムドゲイン』を塗布する方法や、骨が再生するスペースを確保する『GTR法』などで、骨再生を底上げします。
歯茎を切開し歯根に働きかけるため、外科処置となります。
骨移植
骨移植は、自身の口腔内から骨や血液を採取し欠損部位に移植する、歯周組織再生医療の一種で、人工骨を使用する場合もあります。
浅く広範囲にわたって骨が減少した場合にも対応できる造骨法のため、インプラントのための治療法として効果的です。
エムドゲインと併用する方法もありますが、骨移植単体だと保険適用となる場合もあります。
抜歯
炎症があまりに酷い歯や、歯のぐらつきが酷い歯については、他の歯への影響を考えて、抜歯した方がいい場合があります。
歯周病治療はできるだけ歯を残すために行う治療ですが、どのような治療を行っても残すことが見込めない歯は抜歯に踏み切ります。
例えば歯根の先まで歯石が付着している場合、抜かずに歯石除去は難しく、歯石は細菌の塊のため、放置すると周囲の組織を侵していくためです。
抜歯した後は歯周病の進行は止まりますが、上述にあるように放置せず、その後は口腔機能の回復のため、インプラント・義歯・ブリッジなどの装着の治療を続けます。
歯周病が手遅れになる前に
歯周病が手遅れになる前にできることを紹介します。
歯周病は進行する疾患ではありますが、その進行は遅い可能性もあるため、発見さえできればメンテナンスで食い止めることが可能です。
現在では歯の再生治療もあるため、諦めないで自身の歯を守りましょう。
歯磨きによるプラークコントロール
プラークコントロールとは、細菌の塊である歯垢(プラーク)を減らす取り組みのことです。
歯垢は歯周病だけでなく、虫歯の原因にもなります。
しかし歯周ポケット内の歯垢や歯石は自宅でのブラッシング(セルフプラークコントロール)では取れないため、歯科医院のクリーニング(プロフェッショナルプラークコントロール)との連携が必要です。
プラークコントロールは歯周病の初期でも重度でも変わらず行われる治療法といえるため、しっかり歯磨きして歯垢の付着予防に努めましょう。
定期的な歯科検診
定期的な歯科検診を行うと、正しい歯磨きの方法の指導やクリーニングを受けられ、歯周病の早期発見ができて、早期治療につながるため、歯周病の予防に最適です。
歯科検診では、虫歯のチェックの他に、歯周ポケットの深さを測ってくれます。クリーニングでは歯垢だけでなく歯石も除去されます。
歯周病にかかっていない人でも、虫歯の進行がそれほど遅くないため、4ヶ月~半年に1回の頻度の歯科検診が理想です。
歯周病にかかっている人は3ヶ月に1回通うことをおすすめします。
歯周病菌はクリーニングできれいにしても、3ヶ月するとまた増えるといわれているためです。
歯周病に罹患してから予防が大切なことに気付かなくて済むように、歯が健康なうちから定期的に歯科検診を受けましょう。
生活習慣の見直し
生活習慣は歯周病に大きな影響を与えており、せっかく治療に通っていても、生活習慣が改善されていなかったら病状も同様に改善されません。
特に歯周病に影響がある生活習慣は以下です。
- 食生活……間食が多い人はプラークコントロールが難しくなる
- タバコ……歯周病が治りにくくなる
- ストレス……免疫力が低下する。緊張で唾液が減ると口内に雑菌が増える
- 睡眠不足……ストレスと同様のリスクがある
どのような病気も生活習慣と密接な関係があるように、歯周病にも影響を与えます。
より治療の効果が上がるように、生活習慣を見直しましょう。
歯周病のサインを見逃さない
歯周病の初期症状はなかなか発見できないといわれていますが、じつは気付いていても見逃している場合があります。
- 歯茎から血が出る
- 腫れ・赤み
- 口の中のネバつき
- 口臭
このような症状に気付いても、ちょっと様子を見てしまう人がほとんどです。
これらの症状は初期症状に見られますが、人によっては中等度の手前で現れることも珍しくありません。
個人差もあるため一概に歯周病とはいえないかもしれませんが、このような症状を見つけたら、痛くなくても早めの受診を強くおすすめします。
まとめ
歯周病は手遅れになると外科的処置が必要になる場合があるため、費用も通院回数も期間もかかります。
しかし、手遅れでも治療方法があるだけいいのかもしれません。
健康な口腔環境を再び手に入れられるなら、外科手術でも受けた方がいいでしょう。
そのような歯周病治療を受けるのであれば、口腔外科もこなす歯科医院がおすすめです。
箕面おとなこども歯科は、歯を残す治療法にこだわる院長がいる「歯医者も通う歯科医院」です。
歯周病治療・インプラント・予防歯科・歯科口腔外科と、手遅れの歯周病に対応するべくほとんどの方法を準備しています。
歯周病が手遅れで諦めていた人も、箕面おとなこども歯科にぜひご相談ください。