歯周病は初期症状に「歯茎から血が出る」「歯茎が赤くなる」などがありますが、そのくらいなら様子を見てもいいと思われがちで、歯科医院を受診しない方が多いのが現実です。
では、様子を見て自分で対策することで、歯周病を治すことは可能なのでしょうか?
この記事では、歯周病は自分で治せるのか、どんな対策があるのか、悪化を防ぐ方法や正しいブラッシング方法などを紹介します。
自分でできる対策にどこまで効果があるのかを正しく知って、歯周病を悪化させないための参考にしてください。
歯周病は自宅で治せる?
歯周病は、自宅で治すことは残念ながらできません。
しかし、昔は治らないといわれていた歯周病は、今では「治る」といっても嘘ではない程度に、悪化を防ぎ、改善することが可能です。
歯周病が自宅で治せない理由や、自宅で悪化を防ぐヒントを紹介します。
自宅でのケアだけでは歯周病は治せない
歯周病の基本的な治療は、徹底した『プラークコントロール』ですが、自宅だけでは成しえません。
歯垢と歯石を取り除いて口腔内を清潔に保つことが、歯周病の初期でも重度でも重要な治療ですが、歯周ポケット内の歯垢はどんなに正しいブラッシングでも歯磨きで落とすことはできません。
そのため、プラークコントロールには、歯科医院で行われる『プロフェッショナルプラークコントロール』による歯垢除去と、自宅で歯垢の付着を予防する『セルフプラークコントロール』が必要になります。
歯周ポケット内の歯垢や歯石を歯磨きで落とすことはできないため、歯周病は自宅で治せないと結論付けられます。
しかし、プロとセルフの協力関係で改善に向かうことはできます。
歯科医院の指導による正しいブラッシングで念入りな歯磨きを行い、歯垢を作らず寄せ付けないよう心がけ、それでもついてしまった歯垢や歯石はプロに除去してもらいましょう。
「効く」といわれる自宅での治療法の効果は?
歯周病は、治療方法や便利なアイテムを使っても完治には結びつきませんが、口腔機能に役立つ補助的な効果はあります。
歯周病に効くと紹介されている方法にどのような効果があるのかを紹介します。
うがい薬・マウスウォッシュ
うがい薬やマウスウォッシュは、殺菌成分が含まれている液体のデンタルケア用品です。
口をゆすぐことで口腔内を清潔に保つ効果があり、歯磨き後の仕上げや忙しいときの歯磨き代わり、口臭予防として使用し、効果を発揮します。
しかし歯周病を治療するためには歯垢や歯石を除去する必要があり、歯ブラシでも除去できない歯周ポケット内の歯垢を口をゆすぐだけで除去することはできません。
治療効果はありませんが、補助的な使用で歯周病を予防するアイテムとして使用するのがいいでしょう。
薬用歯磨き粉
歯周病に効くとされる成分を配合した薬用歯磨き粉はたくさん出回っていますが、もともと歯周ポケット内の歯垢は歯磨きで落とせるものではないため、歯周病を治す効果はありません。
また、物理的な正しいアプローチでなければ歯垢も歯石も落ちないため、歯磨き粉にどのような成分が入っているかということよりも、どのようなブラッシングで歯垢を除去・予防するかということの方が重要です。
軟膏などの塗り薬
「塗る歯周病薬」という謳い文句で、殺菌作用や消炎作用があるとして塗り薬や軟膏が売られているのを見かけることがありますが、歯周病治療の効果はありません。
口腔内で歯周病を引き起こしている細菌はバイオフィルムに守られているため、殺菌成分が含まれていても中まで届かず、消炎作用があったとしてもそれは一次的なもので、治療には至りません。
もしも炎症が治まったとしても、それは受診がその分遅れるため、むしろ悪化のリスクが高くなります。
抗生物質
抗生物質には確かに殺菌作用がありますが、バイオフィルムは抗生物質や消毒剤が効きにくくなる特徴があるのと、抗生物質に対する耐性を持つ場合があります。
歯周病を引き起こしている口腔内のバイオフィルムを破壊するためには、相当量の抗生物質を服用しなければならず、副作用などを考えると現実的ではありません。
進行段階で治し方は変わる
歯周病には進行度合いがあり、それぞれの段階に適した治療方法があります。
そのため、歯科医院での治療法は症状に合わせて変わりますが、自宅でできることはどの状態の場合でも、丁寧にブラッシングして歯垢を予防することに変わりありません。
しかし歯磨きの際に歯間ブラシを使い磨きにくい所の歯垢を除去するのと同じように、上で紹介したものを補助として上手く利用するのは、むしろいいアイデアといえるでしょう。
歯周病の悪化を防ぐ正しい歯磨き方法
正しい歯磨きの方法を知ることで、歯垢の落とし損ねは減らせるはずです。
歯周病の悪化を防ぐ正しい歯磨きの方法を紹介します。
バス法
バス法は歯周ポケットのケアに適しています。歯茎のマッサージ効果も得られます。
バス法に適した歯ブラシは「とても柔らかい~やわらかめ」で、歯周ポケットに入るくらいの、毛先が細いものが向いています。
歯周ポケットに毛先を入れるイメージで磨きます。
- 歯に対して45度の角度で、歯ブラシの毛先を歯茎と歯の境目に向けて軽く当てる
- 45度の角度を保ったまま、力が入り過ぎないように小刻みに横にブラシを動かす
ローリング法
ローリング法は歯茎のマッサージ効果が高く、軽度の歯周病の人、歯肉に炎症のある人に有効です。
歯ブラシの毛が長くて少し固めのものが向いています。
- 歯ブラシの脇を歯茎に押し当てる
- 歯ブラシに圧をかけながら、歯茎から歯に向かって回転させて磨く
- 1つの歯に対して5回ほど磨く
スクラビング法
スクラビング法は軽度歯肉炎や歯並びの悪い人、知覚過敏の人に向いています。
毛先や形がストレートの小さめのブラシで、毛の硬さは普通くらいが適しています。
歯冠部もよく磨けて清掃効果が高く、子どもから大人までおすすめです。
- 歯茎と歯に対して直角に歯ブラシの毛先面をあて、毛先が歯間に入る程度に軽く押し付ける
- 細かく左右に振動させるように磨く
- 1つの歯に対して20~30回ほど動かす
フォーンズ法
子どもや高齢者など、歯が上手く磨けない人が磨きやすい方法です。
硬い歯ブラシで強い圧で磨くのは避けましょう。
表面の汚れを効果的に落とします。
- 上下の歯を軽く噛み合わせる
- 毛先面を歯に直角にあてる
- 大きく円を描くように歯ブラシを動かして磨く
- 噛み合わせ面を磨く
便利なアイテムで歯磨きの効率をあげる
歯磨きの効率を上げる、便利なアイテムを紹介します。
歯ブラシだけでは磨きにくいところの歯垢も、便利なケアアイテムでしっかり落としましょう。
歯間ブラシ
歯間ブラシはワイヤーに細い毛がついたブラシで、歯と歯の間に差し込むようにして歯間を磨きます。
前歯に対して使いやすいストレートタイプ(I字型)と、前歯は勿論奥歯の歯間にも使いやすいL字型があります。
太さもさまざまあり、隙間に対して細すぎると歯垢を充分に落とせず、太すぎると歯肉を退縮させてしまうため、ちょうどいい太さのものを使用すると効果的です。
まずは細いサイズから試してみるか、歯科医院で相談してみるのもおすすめです。
歯間はどこも同じではないため、3種類程度を用意して使い分けるとよいでしょう。
デンタルフロス
デンタルフロスも歯間の歯垢を除去するもので、歯間に糸を通して使用します。
糸巻きタイプと、持ち手がついているホルダータイプがあります。
使用方法に慣れるまで少し時間がかかるかもしれませんが、虫歯や欠けなどがあると切れるため、異常が分かりやすくて便利です。
マウスウォッシュ
マウスウォッシュはうがい薬や洗口剤とも呼ばれている、口をゆすぐことでオーラルケアの効果が得られるものです。
「歯周病に効く」「口臭予防に」というくらいなので、殺菌成分や抗炎症成分など、効果のあるとされる薬用成分が含まれています。
マウスウォッシュの薬効はバイオフィルムには太刀打ちできませんが、歯磨きの後の仕上げとして使用すれば、歯周病に対して予防効果はあるとされています。
歯磨きの代わりになるという話を耳にしますが、歯垢は歯磨きなど物理的なアプローチをしないと取れないため、マウスウォッシュは歯磨きの後に使用しましょう。
歯ブラシの交換も忘れない
歯ブラシには交換時期があります。適切な交換時期は約1ヶ月ですが、その理由には歯ブラシの寿命と雑菌の繁殖があります。
歯ブラシは使い込むと毛先が広がりますが、それ以外にも弾力がなくなったり、毛先が折れたりなど、疲弊が目立ってきます。
歯周ポケットの中を磨くのに重宝する柔らかく細い毛は特に消耗が早く、見た目はそうでもなくても清掃能力は低下しています。
そして歯ブラシは雑菌が繁殖しているため、あまり長く使い込むとその菌が口臭や歯周病の悪化につながる可能性もあります。
1ヶ月に1回を目安に、まだ使えると思ってもきちんと交換して、清潔な歯ブラシで歯を磨きましょう。
歯ブラシの洗い方と保管方法のヒントです。参考にしてください。
- 流水をかけながらしっかりゆすぐ
- ブラシ部分をよくもみ込むようにして洗う
- キッチンペーパーなどで水気を拭き取る
- ドライヤーなどで乾燥させるか風通しのよいところで保管
- 他の人の歯ブラシと触れ合わないように保管
生活習慣の改善で歯周病の悪化防止
歯周病は生活習慣病の一種といわれています。
生活習慣を改善して、歯周病の悪化を防止しましょう。
食生活の見直し
食生活の見直すには、食べるものを選ぶことに加え、食べ方も考えるのも必要です。
歯垢は糖分をエサにして増殖するため、食生活に糖分が多いほど歯周病のリスクが高まります。
特に歯周病と糖尿病は関わりが深く、歯周病の治療をすると血糖コントロールが改善するといわれています。
そのため、糖尿病になりやすいといわれている高カロリー・高脂肪・高塩分という食生活に心当たりがあれば改善した方がいいでしょう。
他にも、間食をなるべく控える・寝る前に食べない、柔らかいものばかりを食べないなど、食べ方を考えることも、正しいプラークコントロールには必要です。
栄養バランスのとれたものを、規則正しい時間に食べるようになれば、食生活の見直しは成功でしょう。
免疫力を上げる
歯周病菌は感染症のため、菌に負けないよう免疫力を上げましょう。
そのための生活習慣の改善ポイントは以下です。
- 質の良い睡眠
- ストレス解消
- 適度な運動
歯周病の急性症状が起こるときは、免疫力が低下した時です。強い炎症が起こり、歯茎なのか歯なのか、どこが痛いのか分からないくらい痛み、赤く腫れます。
炎症が長引くことで骨が溶けるため、歯周病治療は炎症を起こさないようにするのが大切です。
上記の3つを心がけると免疫力が上がるため、炎症を予防できます。
健やかな日常を送ることが、歯周病に負けない身体を保つ秘訣といえます。
禁煙
喫煙は全ての生活習慣病の敵ですが、歯周病も例外ではありません。
喫煙していると酸欠状態を起こしますが、歯周病の症状に見られる出血が酸欠の所為で少なくなるため、歯周病の悪化に気づきにくくなります。
また、歯茎にニコチンが沈着すると、赤く腫れるはずの症状が分かりづらくなります。
進行の目立たない歯周病の症状が喫煙に隠されるため、治療に結びつきにくくなり、手遅れになるケースが少なくありません。
また、ニコチンは免疫力や治癒能力も低下させるため、悪化しやすく、治りにくくします。
歯科医が禁煙をすすめるのはこのような理由があるためです。歯周病の自宅での治し方の一つはきっと禁煙でしょう。
歯科医院の定期検診が歯周病予防に効果的
歯科医院の定期検診では虫歯のチェックの他に、正しいブラッシングの指導や歯周ポケットの深さの検査、歯垢や歯石の除去を行います。
自覚症状がなくても、歯科検診を受けることで早期発見も早期治療も予防もしてくれます。
歯周ポケット内の歯垢や歯石は自宅では除去できません。
3か月程度の間隔で検診を受けると、新しい歯石ができる前にクリーニングができるため、歯周病対策には歯科医院の定期健診がおすすめです。
まとめ
毎日丁寧に歯磨きしていても、歯磨きだけではすべての歯垢を落とすことができません。
そのため、プロのケアや治療が必要となりますが、家での毎日のケアもしないと歯周病の悪化は防げません。
歯周病治療は歯科医院と患者さんの共同作業があって初めて成り立ちます。
箕面おとなこども歯科は、歯周病の治療だけでなく、予防と早期発見に積極的に取り組んでいます。
まずは歯科検診を受けて、今どういう状態なのかを知ることも、安心につながります。
小さな不安や違和感があったら、箕面おとなこども歯科に、お気軽にご相談ください。