インプラントは自分の歯に近い噛み心地が期待できる治療として知られていますが、「どれくらい長持ちするのか?」と気になる方は多いでしょう。
一般的に10年以上長持ちすると言われている治療方法ですが、適切なメンテナンスを行うことで、自然歯と同じくらい長持ちさせることも可能です。
この記事では、インプラントの寿命について詳しく解説します。
インプラントの寿命が短くなる原因や長持ちさせるためのポイント、歯科医院選びのコツなどもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
インプラントの寿命は周りの歯と同じくらい長持ちする

インプラントは、適切なケアを続けることで周りの歯と同じくらい長く使えると考えられている治療方法です。
インプラントは顎の骨と強く結合する『インプラント体(人工歯根)』を土台として使いますが、この部分が安定していれば、長期間快適に噛むことができます。
丁寧に管理すれば20年、30年、さらにそれ以上使える場合もあり、自然の歯のように長く付き合っていけるといえるでしょう。
ここではインプラントの寿命が来たときの症状や、入れ歯・ブリッジの寿命との違いについて解説します。
インプラントの寿命が来るとどうなる?
インプラントの寿命が来ると、インプラント体が顎の骨から外れて抜け落ちてしまいます。
金属部分そのものが錆びて劣化するわけではなく、骨との結合が弱くなることで支えられなくなるケースが一般的です。
上部構造(被せ物)が欠けたり割れたりした場合は作り直しが可能ですが、インプラント体が外れた場合は再治療が必要になることがあります。
インプラント体が脱落してしまう原因はさまざまで、噛み合わせの不具合や歯ぎしり・食いしばりの癖、メンテナンス不足などが挙げられます。
入れ歯やブリッジとの寿命の比較
失った歯を補う治療方法として入れ歯やブリッジなどがありますが、インプラントはこれらの治療法と比べて長く使える傾向があります。
入れ歯は2〜3年程度、ブリッジは5〜7年程度で作り直しや修理が必要になることが多いため、インプラントのほうが長く使えるといえるでしょう。
そして実際のブリッジの生存率を調査した論文もあり、10年後の予後良好なものはわずか31.9%であったと報告されています。
入れ歯やブリッジは見た目を整えながら噛む機能を補う治療ですが、支えとなる歯や歯ぐきの状態に影響を受けやすい特徴があります。
特にブリッジは両隣の歯を削って支台にするため、支える歯に負担がかかりやすい治療方法です。
一方、インプラントは顎の骨にしっかり固定されるため、安定した状態を保ちやすい点が魅力です。
素材も劣化しにくく、メンテナンスを続ければ長期間使用しやすい治療法といえます。
インプラントの寿命を縮める原因

インプラントの寿命を縮める原因として、以下が挙げられます。
- インプラントの質が悪い
- メンテナンス不足
- 喫煙習慣がある
- 歯ぎしりや食いしばり
- 噛み合わせの不具合
- インプラント周囲炎
- 骨粗鬆症や糖尿病などの全身疾患
ここでは上記の原因についてそれぞれ解説します。
インプラントの質が悪い
インプラントの寿命は、インプラント体そのものの品質にも左右されます。
インプラントには多数のメーカーが存在し、素材や加工技術、形状などがそれぞれ異なります。
品質の高いメーカーの製品は、骨と結合しやすい表面加工がされていたり、長く使うことを想定した構造になっていることが多いです。
一方で、費用が極端に安い治療では、国内で承認されていない製品や素材が十分に検証されていないものが使われる場合があります。
すべての安価なインプラントが悪いわけではありませんが、品質が十分でない製品を選ぶと、骨との結合が弱くなりやすい可能性が考えられるでしょう。
インプラントを長期的に安心して使うためには、メーカーの実績や信頼性を確認し、歯科医師の説明をきちんと聞くことが大切です。
メンテナンス不足
インプラントは人工物のため虫歯にはなりませんが、周りの歯ぐきや骨は天然の歯と同じように細菌の影響を受けます。
ブラッシングが不十分だったり、歯科医院でのクリーニングを受けていなかったりすると、インプラント周囲に汚れが溜まり炎症が起こりやすくなります。
この炎症は『インプラント周囲炎』と呼ばれるもので、進行すると骨が下がり、インプラントが不安定になることがあるため注意が必要です。
歯肉や歯ぐきに炎症が起こると顎の骨が破壊され、インプラントの寿命を縮める原因となります。
インプラント周囲炎を予防するためには、日々のセルフケアに加え、歯科医院での定期検診やクリーニングも欠かせません。
喫煙習慣がある
喫煙は、インプラントの寿命に影響する要因の一つです。
タバコに含まれる成分には血管を収縮させる作用があり、歯ぐきの血流が低下しやすくなります。
血流が悪くなると、インプラント手術後の傷の治りが遅くなったり、人工歯根と骨が結合するまでに時間がかかったりすることがあります。
さらに、インプラント周囲炎のリスクが高まる点にも注意が必要です。
喫煙習慣にはこのような悪影響があるため、インプラント治療を検討する場合は禁煙するのが望ましいでしょう。
いきなり禁煙するのが難しい場合には、まずは本数を減らすことから始めてみてください。
歯ぎしりや食いしばり
インプラントの寿命を縮める原因の一つとして、歯ぎしりや食いしばりが挙げられます。
天然の歯には『歯根膜』というクッションの役割を持つ膜がありますが、インプラントにはこの構造がありません。
そのため歯を噛み締めたときに強い力がかかると、衝撃を逃がせず、人工歯根や周りの骨に直接負担がかかってしまいます。
これが続くと、インプラントの寿命が短くなる可能性があります。
こうした歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合には、歯科医院で専用のマウスピースを作ることで、インプラントにかかる力を分散させることが可能です。
噛み合わせの不具合
噛み合わせがずれている状態で強く噛むと、インプラントに無理な力が加わり、人工歯根と骨の結合に悪影響を及ぼす可能性があります。
噛み合わせは一度改善しても、日常生活の癖によって変わる場合があります。
噛み合わせのバランスを崩す原因として挙げられるのが、片側だけで噛む習慣、頬杖をつく癖、柔らかい物ばかり食べる生活、うつ伏せ寝などです。
こうした悪い習慣が続くと、一部分に負担が集中しやすくなり、インプラントの動揺や脱落につながることがあります。
インプラント周囲炎
インプラント周囲炎は、インプラントの周りの組織に炎症が起こる病気です。
インプラントは虫歯にはなりませんが、歯周病に似た炎症が起こる場合があります。
これは清掃不足で歯垢(プラーク)が溜まり、インプラント周辺に細菌が増えてしまうことが主な原因です。
初期段階では『インプラント周囲粘膜炎』と呼ばれ、歯ぐきが腫れたり赤くなったりします。
この状態を放置すると、炎症が深い部分まで広がり、インプラントの脱落につながることがあるのです。
こうしたリスクを避けるためには、日常の丁寧なブラッシングや歯科医院での定期的なメンテナンスが欠かせません。
骨粗鬆症や糖尿病などの全身疾患
インプラントの寿命に影響する要因として、骨粗鬆症や糖尿病などの全身疾患が挙げられます。
特に骨粗鬆症や糖尿病は、骨や血流に関わる病気のため、インプラントと骨が結合する過程に影響する可能性があるのです。
これらの病気の影響によって、骨結合が正常に行われなかったり、局所的な免疫力の低下によりインプラント周囲炎のリスクが高まったりする恐れがあります。
健康状態によっては手術自体が難しい場合もあるため、全身疾患がある方は一度歯科医師に相談してみましょう。
インプラントの寿命を延ばすポイント

インプラントの寿命を延ばすポイントは以下の通りです。
- 信頼できるインプラントメーカーを選ぶ
- 定期的にメンテナンスを受ける
- 日々のセルフケアもきちんと行う
- 歯ぎしりや食いしばりを改善する
- 喫煙を控える
- 全身の健康状態を把握しておく
ここでは上記のポイントについてそれぞれ解説します。
信頼できるインプラントメーカーを選ぶ
インプラントの寿命を延ばすためには、質の高いメーカーの製品を選ぶことが大切です。
インプラントは世界中で多くのメーカーが作っていますが、実績のあるメーカーほど研究データが豊富で、素材の安全性や耐久性について根拠が示されていることが多いです。
一方、価格が極端に安い製品の中には、国内で承認されていないものが含まれている場合もあり、素材の品質にばらつきがあるケースも考えられます。
歯科医院で扱っているメーカーはパンフレットや公式サイトで確認できるため、気になる点は治療前に相談しておくと安心です。
定期的にメンテナンスを受ける
インプラントは、治療が終わったあとも定期的なメンテナンスが必要です。
インプラント自体は虫歯にはなりませんが、インプラント周囲炎が起こる可能性があります。
日常の歯磨きだけでは落としきれない汚れが原因となる場合があるため、早い段階で気づくためにも歯科医院でのチェックが欠かせません。
歯科医院での定期メンテナンスでは、インプラントの周囲に汚れが溜まっていないか、骨や歯ぐきの状態は安定しているか、噛み合わせが変わっていないかなどを細かく確認します。
もし異常が見つかったとしても、早めに対処することで大きなトラブルを防ぎやすくなります。
多忙でも年に数回のメンテナンスを続けることで、インプラントの寿命を延ばしやすくなるでしょう。
日々のセルフケアもきちんと行う
インプラントを長持ちさせるためには、毎日のセルフケアもきちんと行うことが大切です。
歯磨きがおろそかになると、インプラント周囲に汚れが残り、炎症のきっかけになってしまいます。
特にインプラント周囲炎は日々の清掃不足が原因となるケースが多いため、丁寧なブラッシングが欠かせません。
歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシ、タフトブラシなどを併用すると細かい部分の汚れも除去しやすくなります。
セルフケアをしっかり行うことで、インプラントの周りの歯ぐきや骨を健康に保ち、寿命を延ばすことにつながります。
歯ぎしりや食いしばりを改善する
歯ぎしりや食いしばりは、インプラントに強い力がかかる原因になります。
対策としては、就寝時にマウスピース(ナイトガード)を使うのが効果的です。
市販のものではなく、歯科医院で自分の歯並びに合ったものを作ってもらうことをおすすめします。
噛み合わせの調整やストレス解消の方法を相談するのも良いでしょう。
歯ぎしりや食いしばりによる負担を減らすことで、インプラントを長持ちさせやすくなります。
喫煙を控える
喫煙習慣はインプラントの寿命を縮める原因となるため、なるべく控えるのが望ましいです。
いきなり禁煙するのが難しい場合は、本数を減らすところから始める方法もあります。
これまでに何度も禁煙を挫折している場合は、禁煙外来を利用して、医学的なサポートを受けながら改善する方法もおすすめです。
インプラントを長く使うためにも、少しずつ喫煙習慣を見直していきましょう。
全身の健康状態を把握しておく
インプラントは口腔内だけでなく、全身の健康状態にも影響を受けます。
特に糖尿病や高血圧、骨粗鬆症などは、血流や骨の状態に関係するため、インプラントの寿命に影響する場合があります。
そのため定期的に健康診断を受けるなどして、全身の健康状態を把握しておきましょう。
インプラント治療を受ける際は、現在の体調や通院歴、服薬している薬についても歯科医師へ伝えることが大切です。
全身状態を把握しながら治療を進めることで、より安全にインプラントを使い続けられる可能性が高まります。
日頃から健康管理を行い、気になる症状があるときは早めに医療機関へ相談しておくと良いでしょう。
インプラントの寿命を延ばす歯科医院選びのポイント

インプラントを長く使うためには、治療後のケアだけでなく、歯科医院選びも非常に重要です。
歯科医院を選ぶときには、以下のポイントをチェックしましょう。
- 信頼できるインプラントメーカーを扱っているか
- インプラントメーカーに精通しているか
- 十分な経験を持つ医師が在籍しているか
- 医院の設備・機材は十分か
- インプラントの治療実績は豊富か
- 治療後のアフターケア体制は万全か
- 事前検査はしっかり行われるか
使用するインプラント自体の質はもちろんですが、治療を行う医師の技術力や実績、対応などもきちんと確認することが大切です。
特に事前検査をしっかり行っているか、アフターケア体制は万全かなどを確認しておきましょう。
これらのポイントを重視して選ぶことで、インプラントをより長く、快適に使いやすくなります。
治療に関して気になる点がある場合は、治療前の相談時点で確認し、納得のできる回答が得られる歯科医院を選びましょう。
まとめ
インプラントは、正しい手術と適切なメンテナンスを行うことで、周りの歯と同じくらい長持ちします。
長く使うためには、信頼できるインプラントメーカーを選ぶこと、歯ぎしりや食いしばりを改善すること、日々のセルフケアや定期的なメンテナンスをしっかり行うこと、喫煙を控えることなどが大切です。
歯科医院選びもインプラントの寿命に直結するため、今回解説した内容を参考に、自分に合う歯科医院を選んでみてください。
箕面おとなこども歯科では、日本製AQBインプラントのみを使用した精度の高いインプラント治療を行っています。
より安全かつ長持ちするインプラントをお求めの方は、ぜひ当院までご相談ください。
記事監修者

医療法人南風会箕面おとなこども歯科
- 院長
- 領木 崇人
- 略歴
-
- 高知大学医学部附属病院歯科口腔外科勤務
- 大阪府 医療法人靖正会 にしさんそう歯科ナカムラクリニック 常勤歯科医師 その後、副院長に就任
- 大阪府 医療法人靖正会 萱島駅前歯科クリニック 非常勤歯科医師
- 大阪府 医療法人靖正会 守口駅前歯科クリニック 院長、理事に就任
- 京都府 マユミデンタルクリニック 口腔外科担当歯科医師
- 大阪府 まじま歯科クリニック 訪問歯科診療担当歯科医師
- 大阪府 医療法人予防歯科会 マユミ大人こども歯科 非常勤歯科医師
- 2016年9月 大阪府箕面市に、箕面おとなこども歯科開院
- 2021年1月 医療法人南風会を設立
